「よう、カレル!」
「お、タッカ。と…なんでティオもいるんだ?」
「手助けに来たんだよ」
生産基地の入り口付近で、ようやくカレルたちとタッカ、ティオは合流した。当然ながら、死者、戦闘不能者はゼロ。多少のかすり傷は皆あるが、問題はなさそうだ。
「ウェイン、リーダー任せていいか? 人使うのはあんま得意じゃない」
「了解ですわ」
カレルがウェインに対して司令塔の座を明け渡し、本格的に攻略に入る。
「まず、三つに班を分けますわ。カレル班、タッカ&ティオ班、そして私の班……――」
流石は第7支部で最もリーダー適性の高い守護者である。あっという間に班編成を済ませ(ライムはタッカ&ティオ班に配属された。)。
作戦はこうだ。
まず、ウェインとカレルの協力魔法、『氷柱の豪雨』(ブリザドスコール)によって上空から生産基地全体を攻撃し、建物を崩壊させた後に出てくるロボに掃討(クリアリング)を仕掛ける。要するに、建物に入らずにあぶり出すというえげつない作戦である。
「あ、そうですわ。ライム、天井に穴が開いたらティオと協力して、この『魔晶宝石』を基地に投げ込んでくださいな」
と言って、ウェインが手渡したのは『帯電濃霧』を刻んだ『魔晶宝石』である。しかも量が多い。十数個はありそうだ。
「なるほどな。久々に空飛んでみるか」
作戦を聞いたティオは意味深につぶやいた。
「お~~! ホントに飛んでますよティオさん!」
「と、当然だ…。こ、これでも元の世界では、かなりブイブイ言わせてたんだぞ」
元の姿に戻ったティオは、どうやら超能力を操る龍らしい。脳に直接語りかける形で話しながら、私を背に乗せて、軽々と空を飛んでいる。
ちなみに、生産工場の真上には分厚い雲ができ、そこから巨大な氷柱(つらら)が雨のように降っている。あ、なんだか工場の天井が壊れ始めた。
「そろそろ出番ですかね」
「ああ。天井の穴に向けて投げ込め」
「りょ、了か――」
い、と言おうとした瞬間、風が吹いてバランスが崩してしまった。あろうことか、ライムの持っていた『魔晶宝石』は、すべて宙に落下してしまった。
「あああああ、どうしましょうティオさん!?」
「全く、おっちょこちょいだなライムは」
狼狽える彼女をよそにティオは技を発動して、強力な念力で『魔晶宝石』を捉える。そして、そのまま穴に向けて放り込んでいった。直後、工場のあちこちから濃霧が立ち上り始める。しかもよく見ると、勢いを失った氷柱は弾け飛び、辺りに微細な氷の粒をまき散らしている。
「ティオさん…。確か、雷が落ちる仕組みって…」
「雲の中の氷の粒がぶつかり合って帯電して、一定の電圧まで高まったら地上に向けて放電する」
「つまり、今工場の中は…」
「積乱雲の中みたいな感じじゃねーか?」
今度こそホントに同情してしまった。