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「……いやぁ…これはまずいんじゃないかな…?」

 先ほどの爆発で、カレルは600mほど吹っ飛ばされた上、仲間とも離れてしまった。偶然閉じる予定のゲートの前まで来たのはいいが――

『『『『(ジ~~~~~)』』』』

 ――ロボの数がヤバイ。

 今カレルはガス欠状態と化している。神機の剣も今の魔力ではナマクラとなっているだろう。その状態でざっと60体の近接戦闘タイプのロボである。

 しかし、やることは決まっている。

「ふう、1対60のケンカか――ま、なんとかなるだろ」

 一瞬で一体目の懐に入り、相手の体を思いっきり押す。意表を突かれたロボは勢いよく吹き飛び、周りのロボを巻き込んでゆく。斬りかかってきたロボには躱したと同時に足を払って浮かせ、同時に蹴って吹き飛ばす。

 さらに近くにいたロボに足払いを飛ばして転倒させ、そいつの上に他のロボを背負い投げで叩きつける。

 このように、打撃でのダメージではなく、吹き飛ぶことでのダメージを主眼に置く、このような戦い方がカレルにはできた。

打撃ではなく、押す、引く、そして投げる。

あまり使う機会はないが、これがカレルが生前から受け継いだ才能の一つである。

また、この戦法を使うのにも理由がある。

氷属性の守護者は総じて体の耐久力が低い。これは圧倒的な器用さの代償でもあるが、氷属性の頂点であるカレルの耐久力は少し笑えないことになっている。それこそ、鋼鉄に拳を叩き込んだら手の骨が砕けかねない。だからカレルは鍛えた筋肉を圧縮して鎧のようにしているのだ。結果的に細身になってしまうが。

 近づいてくる敵を牽制しながらゲートにたどり着いたカレルはゲートの魔糸を引き抜き、一言。

「遊びは終わりだよ」

 直後に放たれた大量のツララが、60体の軍勢を薙ぎ払った。

 正直、こうした方が手っ取り早いから、体術を使う機会が少ないのだ。

 

 

 

「で、気づかれないよう合流したはいいが、どうやって倒す?」

 カレル、タッカ、ウェイン、ライム、ティオの五人はロボから1kmほど離れたところで集合していた。

「それなんだけど…。ウェイン、あのデカロボの中を水で満たせる?」

「穴があればなんとか」

「よし…なら大丈夫。ウェインはその分の魔力は温存しててね」

「分かりましたわ」

「結局どうやって倒すんだよ?」

 話に入れなかったタッカがむくれて尋ねる。

「作戦は、まずタッカ、ティオの二人であのロボの体に穴をあける。そこにウェインが水を満たして、それを俺が凍らせて膨張させて内側から破壊。…で、どうかな?」

「なるほど…。ライムちゃんは何をするんだ?」

「特に何も。強いて言うなら死なない努力くらい」

 カレルの言葉は予想外だったようで、ライムをはじめ、みんなに動揺が走った。

「か、カレルさん…。それって、私が足手まといってことですか…? 私じゃ、みんなの役に立てないんですか…?」

「そ、そうだぜカレル! ライムちゃんもこう言ってるんだ! 何かー」

「…ライム、知ってる? 心室(コア)の強度は魔力の残量と、中身の質に影響されるんだよ」

「え…?」

 突然の事実に驚くライム。タッカも思い出したようで、口をつぐんで下を向いた。

「そ、それがそういう…」

「つまり、今ライムがまともに攻撃を食らったら死ぬ。と、同時にこの作戦の意味がなくなる」

「…!」

 そういうことなのだ。この作戦のそもそもの目的は、ライムの中身の奪取である。そのライムが死んでしまったら、この作戦は失敗どころか、最悪の事態になる。期待の新人を、失うという形で。

「だから、一番危険がある最後の作戦は、ライムには外れて欲しいんだ」

「カレルさん…」

 しばらく押し黙ったのち、ライムは口を開いた。

「もし、私がもっと強かったら、この作戦には参加させてくれてましたか?」

「いや、外れてもらうつもりだった」

「そう、ですか…。分かりました。みなさん、お願いします」

「「「「了解!」」」」

 こうして、4人は動き出した。

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