top of page

「逃げよう」

 巨大ロボが天災を振りまく中、何とか合流できた、タッカ、ウェイン、ライム、そしてティオに、カレルが最初に言った一言がこれだった。

「「「………は?」」」

 みんなの口から気の抜けた声が出る。

「あ、あのカレルさん…倒すんじゃないんですか?」

 ライムがカレルに対して若干の不信感を持った質問を浴びせる。その横ではティオが自分に酔っていそうな顔でうなずいていた。おそらく、あいつを倒さないと俺とライムとの明るい未来はない、とでも考えていたのだろう。

「言葉が足りなかった。今は、だ」

「だ、だけどよぉカレル。いずれにせよ倒さなきゃなんないんだから…」

「じゃ、聞くけど――」

 タッカの意見に対して、カレルは自身を含め疲労の色が濃い面々を見渡して、

「今、この戦力であのロボとやりあえるか?」

「「「――っ」」」

 みんなが絶句してしまう。

 実際そうなのだ。

 カレル、タッカ、ウェインは今日まで三日間戦い続けたうえでの今の戦場なので、消耗も著しい。ティオやライムも、今までの戦いで薬などはほぼ使い切っていた。

 何せ、あのロボの火力は尋常ではなく、ティオの超能力の壁や、ライムの『盾の円舞曲』、ウェインの『水盾』(ウォーターシール)、カレルの『追上氷壁』(アッパーウォール)も、重火器の暴力の前にほとんど持たずに打ち破られてしまっている。

 余談だが、今のこの会話も絶え間なく飛んでくるミサイルを躱しながらだということをここに記しておく。

「だから、いったんあいつを撒いて、魔力を補給する」

「いったいどうするのです?」

 ここでカレルが出した答えは予想外だった。

「ゲートを閉じてる俺の魔糸。一か所からそれを回収する」

「何!? そんなことしたら……いや…そうか…!」

「そ。ゲートの中に入ってる他の守護者10人、そいつらに守らせればいい。ほとんどの奴は倒したんだから」

 カレルの言うことは筋が通っている。今までそれができなかったのは、ロボの数が多すぎたからだ。今程度の量なら何とかなる。だが、

「それよりカレル。どうやってあいつを振り切る!? これだけの速度で撹乱してんのに全然見失う様子がないぜ!?」

 さらに余談だが、ティオをが念動力で起こす気流によって追い風を作り出し、みんなは時速90kmで走り回っていることをここに記す。

ちなみにコレ、めちゃくちゃ疲れる。ティオは龍だからまだ分かるが、どうしてみんなは守護者とはいえ息が乱れないんだ。(ウェインは自分が操る水に乗っている)

「要するに、あいつのセンサーが高性能なんだ。一瞬でもセンサーをくらませて、そのうちに大きく距離を取れば撒けると思うよ。ウェイン、協力して」

「何をすればいいんですの?」

「あいつの全身と俺の連凍剣に濃霧をかけてほしい」

「濃霧? 雷属性の『魔晶宝石』の手持ちは使い切りましたから、『帯電濃霧』は使えませんわよ?」

「いや、普通の濃霧でいい。できる限り濃く、そして電気を通すように設定して」

 二人の会話からは、カレルが何をしようとしているのかは理解できない。タッカやライムも?マークを浮かべている。

「んで、ティオ。端末で場所検索して、守護者全員に壁を張ってほしい」

「あぁ、了解」

 ティオは指示通り、守護者の端末を目印に障壁の念波を飛ばす。これだけの距離でも技をかけられるのが龍たる所以である。流石は俺。(byティオ)

「俺らにもお願い。んで、ティオ。撒いたらすぐ俺のとこに来てくれ」

 ああ、という返事とともにこの場のみんなにも同様の障壁を張る。と、同時にカレルの手招きでみんな巨大ロボとの距離を詰めていく。当然ミサイルを躱しながら。

「はっ!」

 ロボと十mほどの距離になったとき、ウェインが魔法を発動。カレルの右手の剣が、刀身が見えなくなるほど濃い霧に包まれた。ウェインの操作によって、濃霧は刀身から離れることなく留まり続けている。同様の濃霧が巨大ロボの全身を覆い隠した。

 そして、カレルは連凍剣に魔力を通す。

 霧というのは小さな水滴の集合体だ。

 カレルの神機の能力で、濃霧の水滴が凍りついて小さな氷の粒になっていく。それと同時に、濃霧の支配権がウェインからカレルに移る。

 ここで、気づいたことが一つ。

 カレルは連凍剣に魔力を通しながら、右手をものすごい速さで細かく振動させているのだ。

 改めて、雷の仕組みについて。

 空気中の氷の粒がぶつかり合うことで静電気が発生し、帯電していく。そして、電気の特性として、10億v以上になると空気中を通電できるようになり、地上に向けて放電する。

 つまり、10億vに達するまでは帯電させられる。

 今、カレルの右手に握っている連凍剣には、相当の濃度の氷の雲ができている。

「ま、まずいです! みんな、ここから速攻で離れてください!」

 突然ライムが叫んだ。ティオが反射的に念動力で全員を後方に吹き飛ばし、撤退に貢献する。好感度もアップかもだぜ。(byティオ)

「ナイスだライム、ティオ! 食らえ…“稲妻突き”(ライトニングピアス)っ!」

 カレルが叫び声と同時に、右手の連凍剣を神速で突き出す。と、同時に凄まじい量の電気を帯電した氷の霧が勢いそのままに撃ちだされる。それが濃霧にまとわりつかれた巨大ロボにたどり着いた瞬間、蓄えられていた電気が一気に放電した。その瞬間、ロボの周りの濃霧が嘘のように晴れ、一気に周囲の気温が下がった気がする。断言できないのは、

 

 その一瞬後に巨大ロボを中心に凄まじい大爆発が起こったからだ。

 

 カレルは水の電気分解と、電気による水の生成を一瞬のうちに行ったのだ。水は電解質が解けている状態で電流を流すと、吸熱して水素と酸素に分解する。そして、水素と酸素が十分にある状態で電流を流すと、爆発的に化合し水を生成する。言葉だと分かりにくいが、今回の爆発の規模は爆心地から50m離れたカレルが爆風でさらに400mほど吹っ飛ばされるくらいの規模である。

「あのバカ、後で殴ってやる」

 誰のセリフかは、ご想像にお任せします。

bottom of page